静かでとても上質な時間が過ごせた。ものが良すぎて自分の経験では堪能しきれなかったと思う。
延々と選択し続ける中で、正しいことを選び続けるだけが人生でもないのかもしれない。陳腐な感想だとも思うけど、最近の体調と精神状態を優先し続けている私は、その上で改めてこう感じた。
キャロル役のケイト・ブランシェットの声の響きがとても素敵だった。会話の間も、じっくりしていて時間の質が上がっていた気がする。
長い人生の中の、ほんの短い季節の話。
魂で惹かれ合う人と出会い、時間を共有できること。人生の中にそういう時間があるということは、たとえ刹那であってもまた幸せなのだと教えてもらった。鈍い色のまま正しく生きてきた人のいのちが、きらきらと鮮やかに輝く瞬間をとらえたような、そんな映画だったと思う。
その後また別々の暮らしをするとしても、その幸せは心の中にしっかりと残る。時々それを大事に取り出して、抱き締め、しばらくしたらまた仕舞って暮らしへ戻っていく……。2人はそんな感情と記憶を得ることができたんじゃないか。
テレーズとキャロル、出会った時と最後で心の余裕が醸し出す雰囲気、香りみたいなものが逆転していて、なんとも切なかった。
こんな風な魂で惹かれ合うような出会いはどのくらいの人が経験できるのだろう。私にもまだそんな機会が訪れる可能性があるだろうか。
それともあったのに見逃していただろうか。
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